独りよがりから共感を生むこと

クリエイティブは「独りよがり」なものです。「創作」とは、クリエイトとはそのようなものでなければいけません。そのように没頭しなければ、デザインなど浮かぶわけがないからです。「クリエイト」するということは、脳の全機能を使用するようなものです。どのような頭脳労働よりも頭を使う行為、それが「クリエイト」です。クリエイティブな感覚を発揮する際、人は周囲のことなどお構いもなしの状態になります。それほどの集中力を発揮する局面でこそ、真のデザイン力が引き出されます。どのようなデザインでも、仕事であれば自分以外の人との関わりは欠かせません。時には集中できない環境下でのクリエイトを余儀なくされる場合もあるでしょう。そのような時でも求められるクオリティは変わりません。そして、プロのデザイナーであれば、どのような状況でも求められるクオリティを提供すべきです。
自分の持つデザイン力を余すことなく発揮するためには、自分自身で自分が集中できる環境を作るしかありません。そのためには周囲から「勝手だ」と思われる行動をもとらなければいけないかもしれません。クリエイティブな活動のためにはクリエイティブな環境が必要なのです。そして集中できる精神状態です。なににおいても同じかもしれませんが、「イライラ」している状態ではなにもはかどりません。メンタルを健全に保つこと。これもまたプロのデザイナーにとって必要なことなのです。自分に都合のよい環境を作り上げること。これはなかなか難しいものです。特に、企業内で自分だけがストレスを感じることのないような環境をつくることはとても困難なことでしょう。ですが、「デザイン」といういわば特殊スキルを発揮するためには、事務仕事で求められるような環境とはまた違った状況が必要になることもあるのです。 「セルフコントロール」とは、社会人に求められる能力です。デザイナーこそこの自分自身を高めるチカラをつけなければいけません。自分が気持よく、自分の持ち味を引き出すような仕事をすること。これがクオリティの高いデザインを行う秘訣です。そして、そのように独りよがりになって作り上げたデザインに執着しないこともプロのデザイナーとして大切なことです。ひとつのデザインに執着すると、「やり直す」ということが難しくなるからです。プロジェクトとしてプロダクトデザインを請け負っている場合、市場やターゲット層などを鑑みてどうしてもリテイクしなければいけない場合も出てくるでしょう。クオリティの問題ではなく、マーケティングの結果、想定するターゲットが違うという状況がでてくるのです。そのようなときに柔軟に対応できることも大切です。ひとつのデザインに執着するがあまり、「やり直す」ことができない、あるいはやり直すたびにモチベーションが下がり、クオリティが下がってしまうということになりかねません。デザインするときは独りよがりになればいいのですが、出来たものはプロジェクト全体で共有するものです。それを忘れてしまい、「自分の創作物だ」という感覚に囚われてしまうと、何事もうまくいかなくなります。そのデザインは最終的にユーザーの元に届くもの。その商品は関わる人たち全員で作っているということを忘れてはいけません。

 
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