生活に馴染むデザイン

生活に馴染むデザインと一言で表すと、リビングルームや寝室など、人の暮らしがあるシーンで主張しすぎないデザインを連想するかもしれません。しかし、「生活」に根ざしたり馴染んだりすることはそう簡単ではありません。色、素材、形、重さや大きさにいたるまで、すべての要素が関係してくるのです。「人の暮らし」というのは実に多様性に富んでいます。みんながみんな一様な暮らしかたをしているわけではないのです。そんな様々なライフスタイルに馴染むデザインが、いつの時代も求められています。そのようなアイテムを制作する際に、まず連想するのは「自分自身」のライフスタイルです。ですが、それと同じような生活を送る人が多いとは限りません。 自分が稀な存在かもしれないということを忘れてはいけません。みんながデザイナーではないし、そこでよくとられるパターンとしては、「ライフスタイルの提案」です。いまだ誰も試したことがないようなスタイルを商品と共に提案する形です。そのようなスタイルであれば、「共感」ではなく「気づき」として捉えてもらえる可能性が高くなります。新しい利用シーンは、新しい価値になります。
人の購買スタイルは様々に分けられます。「誰よりも新しいモノが欲しい」という人もいれば、「みんなの感想を聞いてからにしよう」という人もいます。新しいモノ好きの人はそれを自分がいち早く購入したことに満足感をえるのです。かたや、他の人の感想を待つという人は決して損な買い物をしたくないという人でしょう。その商品の実際を見極めから購入したいのです。そのように購買パターンも様々なのですから、その商品の「評判」は売れ行きを大きく左右します。「新しいライフスタイルの提案」が正しかったかどうかは、新しい物好きのユーザーがその商品をある程度使ってくれなければ「評判」が得づらいのです。自分たちの提案する、その商品がある暮らしが正しいのかどうか、それはユーザーが決めることなのです。提供側にできることは「提案する」ということまでです。このようなスタイルの商品開発は、まさに「人の暮らしをデザインする」ということになるのではないでしょうか。みんなが同じ暮らしではないわけですから、全ての人に受け入れられるということはなかなか難しいでしょう。ですが、ある一定の嗜好をもった人たちに受け入れられれば、「新たな価値」としてその商品が深く生活の中に根差すということもあり得るのです。日々の暮らしに溶け込むということは、その人にとってはそれが「なくてはならないものになる」ということです。そのような商品こそ価値があり、そのような価値の中には性能や耐久性に加えて「デザイン」という要素も大きく関係しているのです。「人が長く使う」ということはその商品にとってはとてもありがたいことなのではないでしょうか。商品を開発している時には誰もそのアイテムを長く使っていないのです。ですから、その商品を使い続ける未来は想像するしかありません。その未来を作るのは購入して愛用してくれているユーザーなのです。その未来が来るかどうかが、本当の意味でのその商品の価値です。生活をデザイン出来たかどうかということになります。生活をデザインするということはユーザーの未来を左右します。その商品に込めた本当の価値が受け入れられるかどうかは、そのようにしてきめられるものなのです。

 
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