色彩感覚をみがく

デザインするうえで大切な要素のひとつに「色」があります。「色」はそのモノの印象をいとも簡単に変えてしまうチカラを秘めています。プロダクトデザインにおいても、ソフトウェアのデザインにおいても、あるいはゲームのキャラクターのデザインであれ本の表紙、CDのジャケット、その他さまざまなものが、この「色」に支配されることになります。「色なんか感覚で決めるもの」と思いこんでしまっているデザイナーは、残念ながらこの先なかなか実力が伸びません。自分の好きなように色を付けていいというわけはなく、リテイクを重ねるうちにやがてどのような色付けが着地点であるのかが分からなくなってしまうものなのです。
Webサイトのデザインの場合は、最もこの色の使い方が問われる局面であるといえます。プロダクトデザインは材質を決め込んだ時点ですでに色が決まっているかもしれません。ですが、Webデザインはまさに「無」からページを組み込んでいくものです。サイトのメインテーマ、発信すべき情報の内容、そしてユーザーにどのような行動を取ってほしいのかということ、構成案をどれだけ煮詰めていたとしても、色の配置を誤ればいっきにクオリティがさがってしまうのです。Webデザインを始めて間もない方がよく陥ることが、「とにかくカラフルに」ということです。とにかくひたすら色彩豊かにすれば目立つだろうというものです。ですが、この「目立つだろう」という考えは100パーセント誤りです。なぜなら、ユーザーがWebサイトを閲覧する際は、そのユーザーの端末の画面は現在見ているWebサイトだけになっていることがほとんどだからです。ページを開いた時点で、競合はいません。Webサイトを同時に二つや三つも閲覧するなどということはないのです。ですから、サイト自体を派手にしたから、何か良いことがあるかというと、そういうわけはありません。Webサイト上で、ユーザーに持たれてしまってはいけない印象が、「見づらい、わかりづらい」ということです。「情報」を提供してしかるべきのWebサイトが、見づらいが故画面を閉じられてしまっては真価を発揮できていません。
Webサイトのデザインだけではありません。本や雑誌の表紙をデザインする場合にも同じことが言えます。「紙」と「画面」では発色が違いますから、全く「同じ」ではないのですが、「色」の印象はその本文にも影響を及ぼします。「どのような本なんだろう」ということを、表紙の色で判断してしまうこともあるのです。それほどまでに重要な「色」ですから、決して「気分」だけで決めてしまってはいけません。そして、「ファーストインプレッション」ほどあてになる意見はありません。見れば見るほど、判断が鈍るのです。まさに「パッと見」。これに勝る判断はないのです。デザインの中で最も重要な位置を占める「色彩」ですが、これは場数を踏んでも磨けない人は磨けません。造形感覚に優れていても、色彩感覚が劣ればデザイナーとしては三流以下です。そのようなことにならないためにも、日頃から「色彩」に対する感覚を養うことが大切です。方法は、どんなものにたいしても興味を持ち、その「色である理由」を探すことが最善です。何事にも理由があります。そのひとつひとつがあなたのデザイナーキャリアを磨くのです。

 
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