好きに考えることはだれでもできる

「デザイン」とは、一見とてもクリエイティブで華やかな創作活動に見えます。「デザイナー」という言葉が持つそのイメージと相まって、デザイナーを志望する方は年々増えています。「デザイン」にも様々な分野があることはすでにお分かりかと思いますが、「クリエイティブ」な現場というものは、多分に漏れず過酷です。仕事である以上、必ず「締め切り」があります。そして、仕事であるからこそ及第点のハードルは高く、そこに達しないのであればいくらでもやり直す必要があります。リテイクなどは当たりまえです。それもただ言われたとおりにやり直していては意味がありません。デザイナーとしての意地で、「オーダー」の裏にある「ニーズ」を汲み取る必要があります。それは簡単なことではないですし、デザインのスキルやセンスとは何ら関係の無い仕事になってしまうかもしれません。
「デザイン」はとてもクリエイティブです。何もないとこから何かを創り出す。そしてそれをずっと使い続けてくれる人が存在するのです。自分のデザインが人の生活に根差すと思うと、こんなにエキサイティングなことはないのではないでしょうか。自分のデザインで人の暮らしを変える、人の暮らしを作ると思うと、身震いしてしまうほどです。ですが、そのように無限の可能性に満ちたクリエイティブも、「仕事」となるとそう簡単にはいきません。その「モノ」は、他の沢山の人たちと作り上げるものであり、デザイナーひとりのものではないからです。様々な人が知恵を絞り、試行錯誤しながら完成させていくものだからです。もちろん自分の意見が通らないことも沢山あるでしょう。望まないデザインを強いられる局面もあるでしょう。仮にそんな局面になったとしても、逃げてしまっては仕事になりません。そのようなことをひとつずつ乗り越えなければ、商品は完成しないのです。
「自分の自由に」デザインをしているデザイナーなどはいません。例えWebサイトのデザインであれ、ソフトウェアのUI設計であれ、必ず誰かの「オーダー」、そして検証の後のリテイクはあります。そうでなければまともな商品は作れないからです。所属する企業の事業の核となるかもしれない商品設計です。ないがしろに出来ないばかりか、結果はよい方がいいにきまっているのです。そのようなプレッシャーを感じながら、どんなデザイナーも迷いながら、時には遠回りしながらひとつのデザインを作り上げていくのです。そして出来上がったものは「売上」という尺度で正解をだせたのかどうかが試されるのです。それがビジネスの基本であり、逃れられない「結果」です。自分が好きに作っていれば必ず売れる、とはだれも言い切れません。どんなに市場のデータを調査しても、どんなにトレンドを調べ上げても、簡単なことでそれは覆ります。その中で次々に新しい商品を展開するのが企業であり、その企業活動の一部としての「デザイン」がそこにあります。デザインは楽しいものです。とてもクリエイティブです。ですが、その半面デザイナーしかわかり得ない苦悩もあるのです。そのような局面ではデザインスキルは役に立ちません。大切なのは「人間」としてどのような状況でものみ込めるような「器」であるといえます。

 
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