使う人を選ぶデザイン

万人が使いやすくするものもあれば、あえて利用者を選ぶようなデザインもあります。誰でも使えるように、と考えられるのは主に生活家電などです。利用シーンが明確で、利用者がだれであれ、キッチンで使用されることは間違いありません。ですから、老人であれ、若者であれ使いやすく設計されていますし、どんなキッチンにも馴染むようなデザインになっています。対して、利用シーンが明確なアイテムはより「尖った」デザインになっていることが多いでしょう。明らかに業務用ということであれば、それを使うこと自体が「スキル」であることも多いため、使いやすさなどは二の次です。目的の機能を発揮できるように、一般人には理解できないスタイルであることが多いのです。そのようなアイテムは、機能が先行したデザインになっています。
一般ユーザー、つまり「コンシューマ」向けでも尖ったデザインはあります。利用ユーザーのイメージが明確なものなどはそのスタイルが好きな人でなければ使用することが出来ないデザインのものも多いです。ジュエリーなどの服飾アイテムはそれが特に顕著でしょう。利用シーンを限定することでより洗練されたデザインを実現しているのです。デザインの世界では、汎用性のない、利用シーンが限定されたものほど自由にデザインできると思われるかもしれませんが、じつはそうではありません。利用シーンが明確なデザインの中にも、「その道」に特化したデザインだから追求できるものがあります。そして追求した結果は消費者の目にはブランド力として魅力と共に伝わります。ジュエリーメーカーやファッションメーカーは利用シーンを限定して革新的なデザインを競い、またその「ブランド」と明らかにわかるデザインを追求し続け、ユーザーにとっては高い価値を持った、また限られたユーザーにしか購入できないような高級ブランドへと成長した例がいくつもあります。そのデザインはプロダクトデザインとは違い、時代を超えて愛されるものが多く、一生にいくつも購入できないようなアイテムも数多く存在します。敢えて普段使いができないような、利用シーンが限定されたアイテムだからこそ、ユーザーも「夢」などを重ね合わせることができ、そのアイテムを購入することが「ステータス」ともいえるほどにまで価値を見出すようになったのです。もちろん素材や技巧の精緻さなども価値を高める重要な要素ではありますが、なんといってもその「デザイン」自体が価値を持ち、広く愛される要素となっています。そのようなファッションメーカーやブランドは、まさに「デザイン」で昇りつめた良い例といえるのではないでしょうか。時代の流れを作りだし、ファッションやスタイルをリードし続けているその事業形態は、登場したばかりの頃はまさに「イノベイター」といえる発展を遂げた企業ばかりです。ユーザーに求められるデザインをなぞるのではなく、新たな利用シーンとスタイルを提案し続ける、まさにデザインをリードする企業として、君臨しつづけるブランドたちは今でも次の時代を見据え、世の中のファンを驚かせるようなアイテムを試行錯誤しているに違いありません。ユーザーがデザインを選ぶのではなく、デザインがユーザーを選んでしまうほどにまで、それらのブランドたちは価値を認められているのです。

 
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