ライフスタイルを作りだすデザイン

世の中のさまざまなアイテムは、それが「その姿」であるために利用方法などが定まったり、周辺機器が整ったりするものです。それはまさに、1つのアイテムが「生活を左右する」ということです。そのアイテムのデザインによって周辺機器のチョイスも変わってくるはずです。また、それに伴って供給側もデザインを左右されるのです。そのように、「1つのデザイン」により様々なことが定まっていき、ユーザーも生活スタイルを左右され、自然にライフスタイルが定まっていくということになります。例えば、物理的なボタンを無くした「iPhone」に代表されるスマートフォンは、それらのケースやカバー、そして液晶部分を守るためのフィルムの市場を作り出しました。UIの部分でも物理ボタンがないという革新を果たすことが出来たため、「タッチパネル」という機構、「画面を触って操作する」ということがより浸透しました。多様なアプリケーションが実現され、それを土壌としたコミュニケーション方法や、それを軸とした「ライフスタイル」が実現されたのです。1つのプロダクトがそのように深くライフスタイルを変えたという良い事例です。ライフスタイルが変わるということは、それを実現するための、補助するための、さらに彩るための市場が生まれるということでもあります。スマートフォンの周辺機器は今では家電量販店、また雑貨屋などでも多様なものが置かれるようになりました。そのようなデジタルガジェットに囲まれて暮らすことも当たり前のようになり、一般ユーザーのITリテラシー、デジタルリテラシーが明らかに底上げされたのです。
そのように革新を起こしたのは、やはりiPhoneの「あのデザイン」が飛びぬけていたということもありますし、それを追随するようにしてリリースされた他社のアンドロイドスマートフォンも「画面を触って操作する」というUIは踏襲せざるをえなかったのです。今ではスマートフォンの製品はただ見るだけで「スマホ」とわかるようになっています。それはスマートフォンのデザインのトーンマナーが定まっているからであり、逆に言えば違うデザインにしてもユーザーに「スマホ」と認知してもらえないためでもあります。スマホにおけるデザインの大勢はすでに定まってしまったのです。それはもはや「トレンド」ではなくプロダクトを作るうえでの「マナー」と化しています。ボタンのあるスマホはユーザーからみれば異質なものになるのです。もしボタンを設置するのであれば、それは「別の名前」でなければいけません。これはユーザーの「ライフスタイル」の枠を超えた「常識」というレベルにまで達しており、1つの製品、1つのデザインが生活や常識に革新をもたらしたということでもあります。そのようなアイテムには取り巻く新しいビジネスが生まれ、取り巻く新しい製品の数々が誕生し、1つの産業へと発展するのです。これは「デザイン」と「機能」が完全に調和した良い例です。デザインも、機能も、人の想像を超える革新だったのです。それが「当たり前」になることで、競合各社も追いかけないわけにはいかなくなったのです。ユーザーも、「知らない」ということが少し恥ずかしいと思ってしまうような、圧倒的なアイテムとなったのです。

 
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